肩関節の痛み・可動域の治療方法!!痛みの原因から制限因子を解説【肩関節は4方向から見るべし!】

肩関節の痛み・可動域の治療方法!!痛みの原因から制限因子を解説【肩関節は4方向から見るべし!】

こんにちは!

理学療法士のヨシキです!

今回は拘縮肩についてまとめていこうと思います。

僕自身、1年目で特に悩んで一番勉強したのは肩関節についてでした。

学生時代に勉強はしますが、実習などの実践で肩関節の患者さんを診させていただくことは少なかったこともあり、治療の進め方・考え方でわからないことだらけでした。

なので、今回は肩関節拘縮に対する治療の考え方について、基本的なところから解説していこうと思います。

疼痛の考え方

拘縮肩といえば、五十肩(凍結肩)ですね。

ただ、拘縮肩といえど、肩が固まっているだけではなく痛みを訴える患者さんがほとんどです。

そのため、セラピストがアプローチしていくのは物理的刺激に起因する疼痛と関節可動域制限となります。

まず、痛みの発生機序について解説します。

疼痛は、炎症に起因する急性痛と物理的刺激に起因する疼痛があります。

セラピストがアプローチできるのは物理的刺激のみであり、急性痛に関しては薬物療法・安静・固定・物理療法などが中心となります。

物理的刺激に起因する痛みについては、組織膜に存在する侵害受容器である自由神経終末が圧刺激を受けることでC線維を通って中枢神経に情報伝達します。

ちなみに、急性痛はC線維もありますが、Aδ線維を主体として情報伝達されます。

ここで重要なのが、侵害受容器が圧刺激を受けることで痛みが生じるということですが、「圧刺激」が何かということです。

圧というのは、物理的に押される圧迫以外にも、組織の滑走不全に伴う摩擦ストレス、伸張性低下組織の伸長ストレスなども圧刺激となり組織への物理的刺激を引き起こします。

また、圧力の大きさは力(N)÷面積(m 2)で計算できるのですが、力の加わる面積が小さくなればなるほど圧力は大きくなります。つまり、力を分散できないと(局所集中)圧力は大きくなります。

そのため、痛みに対する治療はこの圧刺激を取り除くことが目的になるため、組織の固さを取り切ることが目的ではないということですね。

侵害刺激を与える要因

肩が痛いという症状に対しても様々な要因が考えられます。

侵害刺激を与える能動的要因として、「疼痛要因が疼痛部位と一致するもの」「疼痛要因が疼痛部位と対側関係にあるもの」「疼痛要因と疼痛部位が隣接および遠隔にあるもの」の3つに分けられます。

「疼痛要因が疼痛部位と一致するもの」については、例えば、肩屈曲時の棘上筋部の痛みがあった場合に棘上筋滑走不全が痛みの要因であった場合などになります。そのため、このパターンでは疼痛部位の滑走性を出してあげると症状の改善が見込めます。

「疼痛要因が疼痛部位と対側関係にあるもの」「疼痛要因と疼痛部位が隣接および遠隔にあるもの」については、例えば、肩屈曲時の肩上方の痛みが生じている場合に、対側に位置する上腕三頭筋の緊張亢進によって上腕骨頭が上方に押し上げられ、烏口肩峰アーチで圧刺激(インピンジメント)を起こしていることが痛みの要因である場合などになります。

次に、侵害刺激が加わる受動的要因として、「生理的可動範囲を超える運動による疼痛」「生理的可動範囲内での運動による疼痛」に分けられます。

「生理的可動範囲を超える運動による疼痛」については、他の関節の動かない分を代償した結果、生理的可動範囲を超えインピンジメントを起こすなどがあります。

「生理的可動範囲内での運動による疼痛」については、先ほど述べたパターンの逆の要因によって痛みを引き起こす場合があります。

ただ、どちらのパターンにおいても、治療目的は関節軸のズレを修正することが目的となります。

上記のように、様々な要因で疼痛が生じますが、必要なこととしては関節は使わないと関節の動きは改善しないということです。

治療では、一発で改善するパターンと治療後は良くてもすぐに元に戻ってしまうパターン、それか全く改善しないパターンが存在します。

全く改善しないパターンは、評価・推論・治療が間違っている、逆に一発で改善するパターンは、評価・推論・治療が正しいといえます。

治療後は良くてもすぐに戻ってしまうパターンでは、根本の組織を捉えきれておらず(触れていない)その周囲組織の緊張が軽減して一時的に圧刺激の軽減が得られていたと考えられ、推論は正しいが治療が間違っているパターンです。

また、もう1つのパターンがあり、評価・推論・治療は正しかったが患者さんが関節を使わなかった結果、元に戻ってしまうパターンが考えられます。

このパターンの場合は大体2−3日で元に戻ってしまう場合が多いです。

肩関節治療だけにいえることではないですが、様々な要因で症状を呈しているためその原因の特定、それに合った正しい治療・触診技術は運動器治療において必須といえますね。

肩関節の解剖と可動域制限

それでは、臨床的な肩関節の内容について解説していきます。

出典ープロメテウス解剖学アトラス 第3版ー

肩関節は、大きな分類では胸骨・鎖骨・肩甲骨・上腕骨とそれらを連結する胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲上腕関節を合わせて肩複合体と呼びます。

今回は、肩甲上腕関節について主に解説していきます。

肩甲上腕関節は、上腕骨頭と肩甲骨の関節窩で形成される関節であり、球関節(3軸性)のため肩複合体の運動の大部分を担っています。

また、可動性が高い分、関節構造上安定性が不足しています。

そのため、浅い関節窩周囲を関節唇が覆うことで関節安定性を保ち、さらに関節周囲を筋・靱帯が覆うように関節の安定性をさらに高めています。

肩関節可動制限を考える際は、関節を4分割にし上前方・下前方・上後方・下後方に分けて考えます。

上前方組織には、棘上筋前部線維・肩甲下筋上部線維・上腕二頭筋長頭腱があり、さらに上関節上腕靱帯・中関節上腕靱帯・烏口上腕靱帯で構成されます。ここの組織の緊張亢進によって肩関節の伸展・外旋制限を呈します。

上後方組織には、棘上筋後部線維・棘下筋があり、ここの組織の緊張亢進によって肩関節の内転・内旋制限を呈します。

下前方組織には、肩甲下筋下部線維・大円筋があり、さらに中関節上腕靱帯・前下関節上腕靱帯で構成されます。ここの組織の緊張亢進によって肩関節の外転・外旋制限を呈します。

下後方組織には、小円筋・上腕三頭筋長頭腱があり、さらに後下関節上腕靱帯で構成されます。ここの組織の緊張亢進によって肩関節の屈曲・内旋制限を呈します。

また、肩関節の可動域制限を考える上で組織の緊張による可動制限も大事ですが、関節運動軸のズレを考えることが必要です。

というのも、先ほど分けた領域の緊張によって大半は骨頭が押し出された結果、可動域制限を呈していることが大半を占めると思います。

特に多いパターンとしては、後方組織にあたる棘下筋や小円筋の緊張亢進によって骨頭は前方に押し出され上腕二頭筋長頭腱への圧が亢進し、上腕二頭筋長頭腱炎を引き起こしたり、結帯動作に対して骨頭前方化によって肩関節内旋が制限されるなどが考えられます。

考え方としては、4分割した内の1部分の組織が固くなると対側方向へ骨頭が押し出されると考えていただくと簡単だと思います。例としては、下後方が固くなることで、骨頭は前上方へ押し出されます。

さらに、肩関節可動制限及び肩関節痛で多いのが肩峰下インピンジメントQLS圧迫による三角筋の痛みなどあります。

肩峰下インピンジメントは、烏口肩峰アーチに対して腱板や大小結節の衝突などで引き起こされ、腱板の肥厚に伴う挟み込みもありますが、下方組織の緊張による骨頭の上方化や前胸部の緊張による外旋制限、肩甲骨下方回旋などによる運動軸のズレが衝突を引き起こします。

出典ープロメテウス解剖学アトラス 第3版ー

また、烏口肩峰アーチ下には自由神経終末を豊富に持つ肩峰下滑液包が存在するため、上腕骨頭の前上方変位は肩峰・骨頭間距離を狭め、肩峰下滑液包への圧を高めてしまうため、運動軸のズレは必然的に疼痛誘発が容易に生じてしまうと考えられます。

これらのことから、肩関節外旋可動域制限がある場合はそもそも烏口肩峰アーチ下を正常に通過できないため、屈曲可動を見る際は、外旋可動の確認も必要になります。

そして、肩関節の回旋を診る際は上腕骨頭軸と肩甲骨の位置関係も重要となるので、上腕骨頭軸と肩甲骨が平行であればあるほど肩関節回旋可動性は大きくなるということだけ覚えておいてください。

次に、QLS圧迫に伴う三角筋の痛みについてですが、QLS(Quadrilateral space)というのは、上方を小円筋、下方を大円筋、内側を上腕三頭筋長頭、外側を上腕骨縁で形成される肩甲四角腔のことを指します。

では、なぜQLS圧迫で三角筋の痛みが生じるのかというと、この四角腔を腋下神経が走行するためです。

つまり、QLSを構成する組織の緊張によって腋下神経滑走が阻害され、腋下神経領域である三角筋に痛みが生じてしまうということになります。

肩関節屈曲時に生じるパターンは、QLS筋が引き伸ばされテンション(圧力)が増すことで腋窩神経を圧迫するなどが挙げられます。

また、圧迫が重度の症例は腋窩神経麻痺によって三角筋が萎縮し外転筋力の低下が生じてしまいます。そのため、腋窩神経障害の確認は、外転筋力・上腕外側の知覚をセットで評価する必要があります。

参考書籍

まとめ

今回紹介させていただいたのは、肩関節治療の基礎的な内容となりますが、個人的には関節治療を行う上で運動軸のズレを考えることが最も重要だと思います。

そのため、治療も運動軸の修正を目的として、どの組織によって運動軸がズレているのか考えるためには、組織の走行、関節の運動学は大切になってきます。

筋への治療では、走行に合わせて筋連結・筋膜連結から考えると狙いとする組織を的確に剥がすことが可能となるので、次回解説できればと思います。

また、今回はあまり述べていませんが、肩関節を診る上で胸椎伸展可動性や肩甲骨可動性は重要になってくるので、その辺りも診ていく必要があります。

まだまだ、肩はわからないことがいっぱいで、一番難しいと感じますが、治療していて一番面白いと感じるので、ぜひ、みなさんも肩関節の治療を楽しんでいただけると幸いです。

それでは、今回はこの辺りでおしまいです。

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!

理学療法士 ヨシキでした!