オーストラリアン徒手療法と仙骨・骨盤の評価(2)|寛骨・仙骨の歪みの評価とアップスリップ【知れば治療の幅が広がる】

オーストラリアン徒手療法と仙骨・骨盤の評価(2)|寛骨・仙骨の歪みの評価とアップスリップ【知れば治療の幅が広がる】

こんにちは!

理学療法士のヨシキです!

今回は前回に引き続き、Jeff Mirray先生のオーストラリアン徒手療法について仙骨・骨盤評価から解説していきます。前回は脚長差の評価で終わったので、その続きからです。

※前回の内容をご覧になっていない方は、こちらから覗いてみてください!(^ ^)↓↓

寛骨の評価

まずは、寛骨の動きのパターンは以下になります。

  • 前方回旋(前傾)
  • 後方回旋(後傾)
  • 内旋(inflare)
  • 外旋(outflare)
  • 上方偏位(アップスリップ)
  • 下方偏位(ダウンスリップ)

挙げてみると意外と寛骨の動きのパターンは多いことがわかります。

さらに、この寛骨の動きに合わせて仙骨、つまり仙腸関節の動きが生じてきます。

前回も述べたことではありますが、寛骨の前後方回旋(前後傾)と内外旋(inflare・outflare)はセットで起きるものだと言われています。

寛骨の前傾時はinflare、後傾時はoutflareが連鎖的に生じます。

加えて、仙骨の動きも見ていくと、寛骨前傾・inflareでは仙骨の逆うなずき運動(後傾)寛骨後傾・outflareでは仙骨のうなずき運動(前傾)が生じてきます。

骨盤の歪みを見ていく上で、この運動連鎖は把握しておくことは重要ですね。

これらの評価は、前回行った脚長差の評価から見ていくことが可能となります。

今回は、寛骨のアップスリップについて解説していこうと思います。

まずは、立位・座位での脚長差評価ステージ3まで行います。

その後に患者さんには、背臥位をとって頂き、ASISの高さの左右差を触知します。

ここで考えることとしては、①立位での評価の結果とマッチするのか②ASISが尾側へズレていないか③トレンデレンブルグ・ポジティブではないかなどが挙げられます。

②ASISが尾側へズレている場合、寛骨の前傾、アップスリップ、足関節回内、股関節屈筋の緊張亢進、股関節伸筋の弱化などが考えられます。

しかし、この時点では寛骨の前傾とアップスリップどちらが生じているか断定はできません。

ただ、アップスリップが生じている大半の症例で寛骨前傾を伴っていることが多いということだけ覚えておいてください。

アップスリップの正確な評価には、座位・立位での体幹前屈動作にてPSISの高さを確認します。

方法としては、座位・立位でそれぞれPSISを触知したまま、体幹前屈動作を行います。その際、前屈45°より前にPSISが上方へズレる場合は、アップスリップを疑います。

次に行うのはスクウィッシュ・テストという仙腸関節の動きを確認する評価です。

患者さんは背臥位をとっていただき、セラピストは肘関節伸展位で患者の両ASISをそれぞれ押さえます。仙腸関節面を意識しながら、真下に向かって圧を加え、背側かつ内方へ軽く押します。

その際の寛骨の動き具合から仙腸関節の歪みを判断するのですが、こればかりは本人の手の感覚に頼るとこが大きいので様々な患者さんで試していただき、寛骨の沈み具合が違うと思うので感じ取ってみてください。

沈み具合が固いなと感じる方がおられた場合は、仙腸関節面で歪みが生じているのではないかと疑ってみてください。

また、歪みがある場合は、お尻の奥の方に響くような痛みがあると訴えられる方を多くみるので反応なども確認してみるといいと思います。

アップスリップに対する施術

アップスリップに対しては、これまでのアライメント評価に加え、動作や整形外科的テストなどを組み合わせることで原因となる筋肉を特定し、必要となる伸長性及び出力を確保してあげると修正が可能です。

関節自体への直接的なアプローチ方法として1つ紹介しますが、私自身はあまり使っていないので、参考程度にみてください(笑

仙骨に対する寛骨の上方偏位を修正するため、患者さんには背臥位をとっていただきます。

次に、アップスリップを生じている側の膝関節を90°屈曲させ、中間位で止めます。

その後、passiveで踵を滑らせながら膝関節を伸展させていき、床に接地させます。

この動作を反復していき、患者さんの力が抜けたタイミングで膝関節を床に叩きつけるようにパーンと落とします。

その際、下肢を下方に牽引するように伸展させるといいでしょう。注意点としては、下肢に何かしらの障害をお持ちの場合はしないようにしましょう。

番外編としてもう一つ紹介します。恥骨結合のアライメントの崩れに対するアプローチとしてショットガン・テクニックを紹介します。

こちらは、恥骨結合の左右差を触知して上で行えるといいですが、実際の現場で恥骨結合を触れることは色々な事情で難しいので省きます。

方法としては、患者さんは背臥位で両下肢伸展かつ軽度外転位をとります。それに対し、セラピストは膝関節上の内側で外転方向へ軽く抵抗を与えます。

次に1・2・3の3のタイミングで一瞬だけ内転方向へ力を入れてもらい、一瞬で力を抜きます。セラピストも3のタイミングで外転方向へ負けないように抵抗を加えます。

この方法は、仙骨にアプローチしても仙腸関節の痛みが取り切れない場合に使用してみるといいでしょう。

というのも、恥骨結合の崩れから寛骨・仙骨へ歪みを呈している可能性も考えられるため、仙腸関節だけでなく恥骨結合の可能性も考慮しておきましょう。

仙骨の評価

まずは、ヤコビー線を腸骨綾を結んだ線から同定します。

その線上の中央やや下方にL5棘突起を触知できると思うので、そこから下方へ真っ直ぐ辿っていき、S1・2を見つけます。

そのS1・2間の高さで中央から1横指両外側に窪みがあると思うので、それが仙骨孔となります。

加えて中央から臀部の下方へ辿っていき尾骨先端(仙骨尖)を触知します。

そこから、両外側斜め上方へ母指1つ分移動した先に仙骨下外側角を触知することができます。

その際、どちらの仙骨下外側角がズレているか確認することで、仙骨がどの方向へ歪んでいるか判断します。

例として、左寛骨の前傾を確認したとします。

その際、次に行うこととして、腹臥位にて仙骨下外側角の高さを確認し、続けて触知したまま、患者さんは肘をつき体幹伸展していただきます。

それに伴い左仙骨下外側角の高さが大きくなります。また、仙骨孔の高さも確認することで左の方が高いことがわかると、左寛骨、仙骨の前傾が判定されます。

加えて、両脊柱起立筋の膨隆の左右差を確認または背中に手掌を置き傾きを確認することで体幹の回旋も評価します。

※逆に体幹伸展時点で仙骨下外側角の高さが近づいた場合は、右寛骨の後傾を疑います。

仙骨に対する施術方法

この方法は、腹臥位で行います。加えて、前傾が生じている方向へ頭部を回旋させます。

その状態から、寛骨前傾側の仙腸関節は圧縮ストレスを受けているため、PSISを押さえて前傾側の股関節を外転させていき、PSISが動くタイミングで止めます。

ここのポジションが仙腸関節に隙間を作った状態となります。

そこから仙骨底と仙骨下外側角に手を当て外側・斜め上方・上方など様々な方向へ圧を加えていくと楽になるという反応が得られる方向があると思うのでそこを探します。

方向が決まったら腹式呼吸に合わせてその方向へ圧を加えていきます。

息を吸うと寛骨前傾・仙骨後傾、吐くと寛骨後傾・仙骨前傾が生じてくるため、前傾を修正が目的である場合、寛骨前傾を促していけばいいと考えられます。

つまり、吸気に合わせて仙骨後傾を抑制するように圧を加え固定します。

さらに、呼気に合わせて仙骨前傾を促すために圧をより加え誘導していきます。このアプローチを反復後、もう一度寛骨・仙骨アライメント評価を行います。

その後、アライメントが修正され、仙腸関節痛が消失しているまたは訴えが改善しているのであれば仙腸関節の歪みが疼痛の原因であったと判断できます。

このアプローチでは一時的な変化になるので、疼痛原因がわかったのであれば、次に寛骨前傾を助長している原因を取り除いていくことが必要となります。

※上記の方法は、寛骨前傾に対しての施術になりますが、腹臥位からの体幹伸展で仙骨下外側角の高さ近づいていた場合は後傾に対してアプローチが必要になるため、先ほどのアプローチの逆で仙骨の後傾を抑制していくように圧を加えます。

最後に

最近では、様々な治療手技がありますが、やはり治療手技を習得する以前に基礎である解剖・運動学を把握しておくが治療の幅を広げる一番の方法だと感じました。

今回紹介したオーストラリアン徒手療法は、他にも様々な手技がありましたが、自分自身の身になったと感じるのは特殊な手技よりも解剖・運動学から考える評価方法でした。

評価方法は知っておくだけで治療の幅を広げてくれますし、自分が行う治療の根拠にもなり、結果的にセラピストとしての自信にもつながると思います。

今回はこの辺りでおしまいです。

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!

それでは、理学療法士 ヨシキでした!