運動学習とは?3つの学習則と臨床における運動学習方法【知れば臨床効率が上がる】

運動学習とは?3つの学習則と臨床における運動学習方法【知れば臨床効率が上がる】

こんにちは!

理学療法士のヨシキです!

突然ですが、皆さんは適切な運動指導ができていますか?

運動強度やリスク管理、動作方法など様々なことに注意して行う必要があると思いますが、今回は運動学習の面から考えていこうと思います。

臨床の中で、他のセラピストのリハビリが目に入ることは多々あると思いますが、私は、なぜ自主トレをしてくれないのかと患者さんと喧嘩をしている先生を見かけることがあります。

皆さんはどうでしょうか?

患者さんに自主トレをスムーズに導入できてますか?

ましてや、してくれないことに腹を立てて、強く当たってしまってはいませんか?

運動学習とは

運動学習とは、各種の運動技能を獲得する過程であると言われ、筋肉の運動に関与する技術の獲得をする過程とも言われています。

そもそも、人間の行動の大部分は学習されたもので構成されており、これまでの経験がその後の同一または類似した場面における行動や行動の可能性に変容をもたらします。

私達が行うリハビリテーションもまた、人の学習の過程に当たります。

3つの学習則

  1. 教師あり学習
  2. 強化学習
  3. 教師なし学習

1.教師あり学習

この学習は、運動中の誤差情報をフィードバックし、小脳に内部モデルを構築することによってフィードフォワードを行い、運動制御することが可能となります。

フィードバックとフィードフォワードを簡単に説明すると、フィードバックでは過去の情報を現在につなげるもので、例えば「前回右に曲がると行き止まりであったため、右に行くべきではない」などのようなものです。

フィードフォワードは逆に、未来への解決策を提示するもので、先ほどフィードバックの例で挙げた右は行き止まりという情報を中枢が受け取ると、次の解決策として「左に行くべきだ」と提示するのがフィードフォワードとなります。

話が少しそれましたが、教師あり学習では誤差情報のフィードバックからフィードフォワードで運動制御を行う学習となります。

また、フィードバック情報を元に小脳に内部モデルが構築されますが、この内部モデルが構築されていくことで運動の上達が図れます。

内部モデルの存在意義としては、比較的遅い運動では感覚神経などによるフィードバックで運動修正が可能ですが、速い運動ではフィードバック時間の遅れのために運動修正が行えません。

そのため、内部モデルを利用することで適切な動作パターンを引き出すと考えられます。

これらのことから、教師あり学習は比較的速い運動学習に適しており、内部モデルが利用されることで運動中の関節の剛性が減少する。

つまり、運動学習によって柔らかい・スムーズな運動が可能となります。

2.強化学習

この学習では、教師あり学習とは違い、運動中の誤差情報を必要とせず、運動結果の適切さ(報酬)によって学習され、大脳基底核が主に関与するとされます。そのため、遅い複合的な動作の学習に有用とされます。

強化学習では、課題の難易度を適切に調整する必要があり、課題に成功した時の達成感などが報酬となります。

3.教師なし学習

この学習では、強化学習同様に、運動中の誤差情報を必要としません。つまり、正解を与えることなく学習していくものであり、決定因子としては似ているか似ていないかで分類されます。

簡単に言うと、運動の正解がないため、課題を繰り返し反復していくことで記憶が形成され、記憶と動作の結果を統合して動作パターンを形成していきます。

これでもわかりにくい人は、赤ちゃんで考えると良いかもしれません。

転びながら寝返り・起き上がり・ハイハイ・立ち上がり・歩行などを学習し、自立していきますが、それに対して親が指導することはありませんよね。

つまり、運動を反復することで自分がしっくりくる運動パターンを見つけ出していくのが教師なし学習になります。

これら3つの運動学習パターンを臨床目線で考えると、代償動作の獲得に教師なし学習が使用され、その運動を修正し、より高度なものにするために運動指導を行うことが教師あり学習となります。

さらに、患者さんそれぞれに合わせた運動強度が必要となるため、運動にやる気がない人や自身のない人には強化学習を行います。

臨床的な運動学習

まず、運動学習で臨床的に重要だと感じるものとして、mental practiceがあります。

mental practiceとはイメージトレーニングのことなのですが、なぜ重要なのかというと、イメージトレーニングと実際の運動を実施した際の脳血流動態は同一であるとされるためです。

運動の習熟のためには、何百万回という反復回数が求められますが、限られたリハビリ時間では必要な練習回数は到底確保することができません。

また、理学療法士がよく介入する歩行練習についても、新規歩行スキルの獲得には最低500回の反復が必要とも言われています。

※代償動作の獲得は数回の反復運動で良い

そう考えると、リハビリ時間だけでは到底確保できないと思いますよね。

そこで、必要となるのが運動イメージです!

実運動と同様の脳血流動態が望めるため、適切な運動イメージが行えることで運動練習を効率よく進めることが可能となります。

そして、適切な運動イメージとは、一人称で運動イメージを行うことであり、実際に自分が行っている風景をイメージできることで実運動と同様の脳血流動態が得られます。

逆に、三人称イメージでは感覚野の脳血流が増してしまうため、効率的な運動学習は見込めません。

そのため、運動の種類によって必要な練習回数を考える必要はありますが、回数の考えよりmental practiceの考えが重要であり、身体的練習とmental practiceの組み合わせが最も運動獲得効率が高いとされます。

イメージトレーニングが重要ということが理解できたら、次はどうやってイメージトレーニングを行っていただくかということが必要ですよね。

適切な運動イメージを行うためには、適切な運動パターンを把握しておく必要があるため、運動学習を行っていただく必要があります。

そのため、効率的な方法を選択して運動指導を行っていく必要があるのですが、効率的な方法をいくつか下記にまとめてみました。

  1. 結果の知識を与えることで運動学習が促進される
  2. 結果の知識は少ない方が運動学習効率は高い
  3. 運動練習後、2.5〜4時間の間に練習すると運動技能が定着されにくい
  4. 運動学習にはばらつき(様々な条件)が多い課題ほど効率的
  5. 練習前・途中でモデルを観察することで学習効率が高まる
  6. 学習する意思が高いほど、学習効率が高まる(ニーズ、必要性の理解、興味など)

などといったものが考えられており、これらを考慮して運動指導を行うことで運動学習を効率的に行うことが可能となります。

また、上記の内容は結果的にイメージを形成するためには重要なことであり、一人称イメージを行おうと思うと、どの筋肉がどのように、どのタイミングで働くことでこの動作を可能とするなどのように細かく理解する必要があります。

そのため、体性感覚や認知機能は重要であり、これらがかけている方への運動指導は時間を要しますよね。

逆に、これらを有していながら、運動習熟がなかなか得られない場合は、身体機能にそもそも問題点があるパターンを除き、セラピストの実力不足といえます。

そのため、可動域を向上させることや、筋力を向上させることが私たちの仕事ではなく、患者さん指導から運動獲得までを含めて理学療法・作業療法と言えるのではないでしょうか。

まとめ

最後に、私が先輩セラピストによく言われたことが、患者さんを上手くコントロールすることも重要な治療ということでした。

その時に、山本五十六という方の名言を教えていただきました。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」

わかりやすくいうと、まずは実際に自分がやって見せること。その後、しっかりと説明を行い、理解してもらった上で実践していただく。そして、その行為を褒めてあげなければ、人は動いてくれない。

これは、運動学習にもすごく当てはまるものだと思います。

患者さんが自主トレをしてくれないことにも理由はあり、患者さんが上手くできないことにも理由はあります。

その理由を見つけ、どうやったらできるか真摯に考え、アプローチすることが治療の基本だと思います。

また、患者さんがリハビリをしてくれることは当たり前ではないということも念頭に置き、感謝の気持ちを持ってリハビリを行っていくことが大切だと思います。

今回は、綺麗事のように聞こえる内容ではありましたが、今回の内容はさまざまな文献や教材を読んでいただくとより深く理解できると思います。

ただ、教科書に示されていることが全てではなく、患者さんは一人の人であるということが前提としてあるということも忘れないようにしたいですね。

今回はこの辺りでおしまいです!

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!

それでは、理学療法士 ヨシキでした!