脂肪体を理解して膝関節痛を取り除く!脂肪体特性と膝関節評価・治療方法【膝関節痛は脂肪体を1番に見るべし!】

脂肪体を理解して膝関節痛を取り除く!脂肪体特性と膝関節評価・治療方法【膝関節痛は脂肪体を1番に見るべし!】

こんにちは!

理学療法士のヨシキです!

投稿1発目は何にしようか迷いましたが、膝関節痛への治療で特に重要だと思う脂肪体について解説していこうと思います。

そもそも、脂肪体とは何か

脂肪体とは読んで字の如く、脂肪のことを指します。

ですが、脂肪と言ってもお腹の横にある脂肪とは違います。

脂肪の塊であることに変わりはないのですが、今回述べる脂肪体は関節周囲に存在します。例えば、膝関節や足関節付近に存在しますね。

※TKA後の膝関節疼痛管理についてはこちらから見てみてください!(^ ^)👇

脂肪体の役割

今回は膝蓋下脂肪体に絞って解説していこうと思います。

膝蓋下脂肪体は線維性滑膜に覆われており、膝蓋靱帯の深部の間隙に存在します。

そしてこの膝蓋下脂肪体は関節角度に応じて機能的に変化をするんですね。

膝関節伸展位では膝蓋骨の下方および内外側へ広範囲に分布します。

しかし、膝関節屈曲位では、膝蓋下脂肪体は膝関節内に入り込み体表面から触れることができなくなります。

このような機能的な変形によって膝蓋大腿関節の衝撃緩衝作用や、関節軟骨と膝蓋靱帯の摩擦を軽減する作用を担っています。

また、膝蓋下脂肪体には毛細血管や神経終末が密に存在しているため膝関節構成体の中では最も疼痛閾値が低いと言われています。

膝蓋下脂肪体と膝関節痛

臨床では膝関節痛を訴えて病院へ来院される患者さんは多いと思います。

病院形態にもよると思いますが、特に目にするのは変形性膝関節症の診断を受けた患者さんではないでしょうか?

変形性膝関節症は、関節軟骨の変性・破壊をきたす疾患であり、それに伴って疼痛が出現し、可動域制限・ADLの低下につながり、最終的には手術に至る症例が多いです。

しかし、実際に軟骨の変性・破壊で痛みを発している人もいれば、全く別の要因で痛みを発している場合もあります。

個人的には診断を受けた多くの方が軟骨の変性・破壊からくる痛みではないことが多いように思います。

そこで、まず痛みの要因として挙げられるのが、膝蓋下脂肪体です!

前述したように、膝蓋下脂肪体は疼痛閾値が低く、痛みを発しやすい組織であり、線維化をきたしやすいとも言われています。

脂肪体が線維化してしまうと生理的張力が失われ硬くなってしまうため、関節角度の変化に伴う脂肪体の滑走が妨げられ摩擦ストレスが加わってしまいます。

この摩擦ストレスの繰り返しが膝蓋下脂肪体の痛みを発生させる要因と考えられます。

脂肪体由来の痛みでは、脂肪体の線維化に加えて脂肪体の移動経路の増大も相対的に摩擦ストレスを増加させてしまうと考えられます。

移動経路の増大とは、簡単に言うと膝関節に捻れが生じている状態です。

本来であれば、膝関節で上下に移動するはずの脂肪体も、膝関節が捻れていればその分斜めに滑走しなければならなくなってしまいます。

形態変化としては、下腿過外旋に伴うQアングルの増大が多くみられます。

つまり、大腿骨内旋・下腿外旋による膝関節の捻れなどが脂肪体の移動経路を増大させてしまうということになります。

そのため、私の脂肪体由来の痛みに対する治療プランとしては、脂肪体の滑走性向上と膝関節の捻れの軽減を目的にアプローチを行っていきます。

膝蓋下脂肪体の評価

まずは、問診の中で痛みの強さ・部位を確認します。

痛みの示し方としては、膝蓋下脂肪体の痛みを考える患者さんの多くは膝関節内側下方及び外側下方に示されることが多いです。

痛みの確認がとれたら、圧痛テストを行います。

先ほど訴えられた部位とは違う場合もありますが、ほとんどの患者さんが同じように膝関節内側下方及び外側下方に圧痛所見がみられます。

また、圧痛所見の確認は、膝関節屈曲・伸展位それぞれで行います。

膝蓋下脂肪体の特性として、膝関節屈曲位では膝関節内方へ入り込み、伸展位では膝蓋骨下方及び内外側へ分布します。

つまり、膝関節伸展位で圧痛所見がみられ、屈曲位で同部位の圧痛所見が消失することが確認されれば、高い確率で膝蓋下脂肪体由来の痛みだと判定できると思います。

※注意として、屈曲・伸展位で圧痛所見が同様に確認される場合は、膝蓋腱や膝蓋支帯の可能性を考えます。

次に、膝関節伸展制限の左右差を確認します。

伸展制限側の膝関節を伸展位へ動かした際に膝関節前面にツッパリ感やつまり感の訴えがあれば、まず膝蓋下脂肪体へのアプローチを実施します。

その後、伸展制限の軽減が確認されれば膝蓋下脂肪体が制限因子であったことがわかります。

次は、膝関節の捻れを確認します。

ここで確認するのはQアングルです。

膝蓋下脂肪体の痛み発生機序として、摩擦ストレスが挙げられ、摩擦ストレスは膝関節の捻れが過度に生じることで増加すると考えられます。

増加する要因としては、本来膝関節の屈伸に伴い上下に滑走する脂肪体に対して、膝関節に捻れが過度に加わることで、脂肪体の滑走経路が上下から斜めになってしまうため、結果的に経路が増加してしまい摩擦ストレス増加につながってしまいます。

そのため、背臥位・立位での下腿の過外旋の有無を確認します。

また、立位での確認では距骨の外旋も確認します。

距骨外旋に伴い足部外側荷重が優位となり、下腿外旋が助長され運動連鎖から膝関節の捻れを増加させてしまいます。

その他の評価では、荷重評価やその他の問題因子の特定のためにマックマレー内外反ストレステストを実施し、膝蓋下脂肪体以外の要因を取り除いていくと、より正確な評価ができます。

脂肪体の治療

今回は簡単治療方法を3つだけ紹介します。

1つ目は、膝蓋下脂肪体のリリースです。

方法としては、脂肪体を直接指圧する方法もありますが、効率的に滑走を上げていくのであれば、内側〜外側・外側〜内側へ徒手的に移動させるようにリリースする方が柔軟性向上が効果的に確認することができると思います。

また、脂肪体は徒手的にほぐすと柔らかくなる特性があるため最初の介入としては有効ではないでしょうか。

2つ目は、膝蓋骨の引き上げ運動です。

膝蓋下脂肪体の線維化が生じると膝蓋骨の低位化が生じます。

そのため、膝関節の伸展制限がある症例においても、膝蓋下脂肪体を引き伸ばし、膝蓋骨の上方化を促せるため有効です。

方法としては、膝関節屈曲に対して徒手的に膝蓋骨を上方へ押し上げ、伸展に対しても同様に膝蓋骨を上方へ押し上げます。この膝関節屈曲動作を繰り返し行います。

3つ目は、パテラセッティングです。

普通にパテラセッティングを行っても膝伸展に伴い膝蓋骨の引き上げができるため有効ですが、それでは先ほどの膝蓋骨引き上げ運動と同じであるため、次は大腿骨外旋・下腿内旋を徒手的に誘導して実施します。

このエクササイズを毎日行っていくことで下腿の過外旋を修正していきます。

治療アプローチはこの他にも、足部への介入や筋への介入など行いますが、膝蓋下脂肪体へのアプローチの入りとして行いやすい3つを紹介しました!

参考書籍

最後に

膝関節痛を訴える患者さんは数多くおられます。

治療の需要としても多いと思います。

大事なこととしては、診断名で患者さんの症状を判断してはいけないということだと思います。

変形性膝関節症と診断されていたとしても、本当に変形が原因で痛みや機能低下・能力低下を起こしているのでしょうか。

それを判断するためにも、評価を的確に行い原因追求を怠ってはいけないと思います。

膝蓋下脂肪体は膝関節を診る上で特に重要だと感じるため、この記事を読んでいただいた方はぜひ膝関節の患者さんを診る際に実践してみていただけると幸いです。

今回はこの辺りでおしまいです。

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!

それでは、理学療法士 ヨシキでした!