筋スパズム・筋ガーディングとは?定義から病態まで解説します!!【これを知れば理学療法の質が上がる】
- 2021.08.30
- 生理学 評価
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こんにちは!
理学療法士のヨシキです!
今回は、筋スパズムと筋ガーディングについてまとめていこうと思います。
筋スパズムは学生時代から臨床にかけて耳にすることはあると思いますが、筋スパズムとは?と聞かれて説明できる人は少ないのではないでしょうか。
なんとなくで答えられる範囲では、収縮時痛があるや反復性等尺性収縮が治療に有効であるといったとこではないかと思います。
なので、なんとなく理解していた筋スパズムの現象及び治療法について病態理解から説明できるよう解説していこうと思います。
筋スパズムとは
筋スパズム(筋攣縮)とは、結論から言うと「筋の痙攣と虚血が生じている状態」であり、筋と血管に同時に攣縮が生じることで筋スパズムの悪循環へと陥ります。
筋スパズムについて解説された文献によると、「1つ以上の筋群が突然に不随意的に収縮すること」や「一時的な組織の損傷によるγニューロンの興奮や局所循環障害」などの説明がされています。
これらを踏まえて、筋スパズムは化学的刺激及び物理的刺激が侵害受容器に伝わることで生じます。
その結果、刺激を受け取った侵害受容器は、脊髄に向けて電気信号を伝えることで身体へ反応を引き起こします。
電気信号の経路
筋スパズムに始まりは、化学的刺激及び物理的刺激を侵害受容器が受け取り、電気信号が脊髄へ伝わることで生じます。
その電気信号は、脊髄へ伝わった後、①脳へ伝達されるものと②末梢へ伝達されるものに分かれます。
まず、①脳へ伝達される経路について解説します。
侵害受容器から発生した電気信号は脊髄後角から脊髄内へ伝わり、後角の対側に位置する側索から外側脊髄視床路を通って視床へと伝わります。
その後、視床から大脳皮質の中心後回へ伝わることで身体に生じた痛みを認識できます。
次に、②末梢へ伝達される経路について解説します。
末梢では、脊髄反射と筋攣縮の経路に分かれます。
まず、脊髄反射は、痛み刺激を侵害受容器が察知すると、電気信号を脊髄内へ伝えます。
脊髄内では、脊髄後角から脊髄痛覚ニューロンを介して交感神経節前線維・交感神経節・交感神経節後線維を通って血管に感作が起こり、血管攣縮が生じます。
筋攣縮の経路については、侵害刺激が入ると脊髄反射によってα運動ニューロンに興奮性に作用し筋攣縮を引き起こすとともに、合わせてγニューロンへも興奮刺激が伝わり、γニューロンの興奮によって筋紡錘の張力が上昇します。
結果、1aニューロンの興奮性が増し、α運動ニューロンを介して筋攣縮を引き起こします。
また、筋攣縮による持続的筋収縮よって筋内圧が上昇し、血管が圧迫されると虚血状態に陥ってしまいます。
結果、そこから発痛物質が放散され、その際、髙閾値機械受容器やポリモーダル受容器の閾値を下げるため、圧刺激に対して感受性が高まります。
加えて、脊髄反射によって筋緊張が高まっているため、筋収縮や伸長刺激によって疼痛が引き起こされてしまいます。
つまり、筋攣縮と血管攣縮が生じることで筋スパズム(筋攣縮)の悪循環に陥ってしまうということになります。
疼痛の考え方については下記の記事で詳しく解説しているので、こちらもぜひ見てみて下さい!(^ ^)↓↓
随意運動におけるα-γループ
骨格筋には、筋の状態を検出する2つの受容器があります。
1つは筋紡錘で、筋の長さと伸長速度を1a群線維(ニューロン)とⅡ群線維(ニューロン)が伝達します。
もう1つはゴルジ腱器官で、筋が収縮すると筋腱移行部が伸長されるため、1bニューロンを介して筋の張力を伝達します。
両者は刺激を受けると錐外筋を収縮させるα運動ニューロンへ刺激を伝えます。
筋紡錘は伸長反射において、伸長刺激を1aニューロンを介してα運動ニューロンに興奮性に伝達し、伸長筋を収縮させます。
逆に、ゴルジ腱器官は、筋収縮に伴う筋腱移行部の伸長刺激を1bニューロンを介して抑制介在ニューロンに興奮性に伝達します。その結果、抑制介在ニューロンがα運動ニューロンに抑制性に働き、収縮筋を弛緩させます。
上記の内容を踏まえた上で、γニューロンについて解説します。
γニューロンはα運動ニューロンとは違い錐内筋を支配しており、特に伸長反射において活躍します。
先程述べた、伸長反射の最後にα運動ニューロンによって筋収縮が生じると、筋紡錘が弛緩します。(正確に言うと筋紡錘の中にある錐内筋)
そうすると、筋紡錘が弛んでいるため、伸長刺激に対しての反応が悪くなり、1aニューロンへ刺激を伝達しにくくなってしまいます。
そのため、弛緩した筋紡錘を元の状態に張らせる役割をγニューロンが担っています。
また、γニューロンは単独で働いているのではなく、大脳皮質から下降している錐体路によってγニューロンが興奮性にコントロールされています。
上記のようなα運動ニューロンが働くとともにγニューロンが働いている状態をα–γループと言います。
ここで重要なのは、α運動ニューロンが働けば、γニューロンも同様に働くという反応であり、つまり、α運動ニューロンの興奮に合わせてγニューロンも興奮するということになります。
この作用が筋スパズムにおけるメカニズムに関わってきます。
伸長反射の反対に屈曲反射も存在しますが、屈曲反射は侵害刺激に対して逃避的に生じる反応です。
例えば、熱いヤカンを触れた時に即座に手を離す反応が屈曲反射ですね。
そして、屈曲が生じるということは伸筋は弛緩します。
これは、侵害刺激の情報は興奮性介在ニューロンを介して屈筋を支配するα運動ニューロンを興奮させ、同時に対側の伸筋を支配するα運動ニューロンを抑制させます。
つまり、侵害刺激によってα運動ニューロンが興奮すると、γニューロンも興奮してしまうため、この反応が長期間続くことで筋スパズムに陥ってしまうと考えられます。
話は変わりますが、この屈曲反射が下肢に生じたと仮定して、片足が突然屈曲してしまうとします。
その場合、突然生じる反応に対してバランスがとれないと転倒してしまいますよね。
そのため、屈曲反射が生じた下肢の対側下肢の伸筋のα運動ニューロンが反射的に興奮し、体重支持するように働く反応があり、これを交叉性伸展反射といいます。
筋ガーディングとは
筋ガーディングとは、簡単にいうと防御性収縮のことで、損傷部位を機能的に動かないように過度に保護している状態といえます。
そのため、筋ガーディングが生じる原因が取り除かれているにも関わらず、該当筋の持続的収縮によって局所循環不全が生じたり、持続的筋収縮が生じることで、疼痛を誘発してしまう状態を筋スパズムと考えます。
ただ、教科書的に筋ガーディングのことを書くと、損傷部位を守るために反応となりますが、損傷したから筋ガーディングが生じているというより、損傷部位が痛いから筋ガーディングが生じていると考える方が捉え方としては正しいのではないかと個人的に思います。
というのも、教科書的にとらえると損傷が生じていない防御性収縮は全て筋スパズムと捉えてしまうことになってしまい、筋ガーディングの原因に対してアプローチしなければならないのに、筋スパズムの血流不全にアプローチしてしまっているなどのような状態に陥ってしまうためです。
要は、同じ疾患・病態でも様々な症状・原因が潜んでいるため、基本的な知識を持った上で応用していくことが必要と考えます。
まとめ
今回は、筋スパズムのメカニズムについて神経系からまとめてみました。
病態のメカニズムは複雑なものもあり、覚えるのが大変なものがあると思いますが、メカニズムを知らずに治療していた場合、その治療で症状が改善しても、治療がどこに効果をもたらして、なぜ良くなったのかわからないまま終わってしまうと思います。
次の患者さんに活かすためにも、なぜ治療が効いたのか考えるためにもメカニズムは気になったものからどんどん勉強していきたいですね。
次回は、筋短縮・癒着なども合わせてまとめていこうと思います。
表からもわかるように、筋攣縮と癒着の所見は似てるとこが多いんですよね。
そのため、癒着による筋ガーディングを間違えて筋スパズムと判断してしまっていることが臨床では多々あるのではないでしょうか。
逆も然りです。
それでは、今回はこの辺りでおしまいです。
今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!
理学療法士 ヨシキでした!
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