【TUG、10m歩行、6分間歩行、片脚立位、FRT、BBSカットオフ】理学療法の基本!!転倒予防に対する理学療法

【TUG、10m歩行、6分間歩行、片脚立位、FRT、BBSカットオフ】理学療法の基本!!転倒予防に対する理学療法

こんにちは!

理学療法士のヨシキです!

今回は、理学療法士とは切っても切れない”転倒”についてまとめていこうと思います。

基礎的な内容が主になると思いますが、評価の方法・基準値、治療の考え方など復習のために見ていただけると幸いです。

転倒の背景

子供の頃に道で転んでも大きな怪我を生じることが少なかった転倒ですが、高齢者では年齢を重ねるごとに発生率を増していき、転倒を契機に身体活動量が低下し、認知機能や身体機能低下を引き起こすことは少なくありません。

現在では、高齢者の3人に1人は1年間に1回以上転倒するとされています。

さらに、高い割合で生じている転倒によって骨折や頭部外傷を呈する症例は少なくありません。

例えば、高齢者の四大骨折として「橈骨遠位端骨折」「上腕骨近位端骨折」「大腿骨頸部骨折」「脊椎圧迫骨折」が挙げられていますが、四大骨折の主な発生要因は脆弱化した骨への強い外力が加わってしまうことと言われています。

つまりは、”転倒による外力”が原因の多くを占めていると言えます。

また、若年者と高齢者の骨の耐久性については、若年者では約7200Nの衝撃を耐えることが可能とされ、高齢者では半分の約3440Nとされています。

そして、転倒で生じる衝撃は約5600Nとされているため、高齢者の骨耐久力を大きく上回ってしまいます。

そのため、転倒=骨折と骨折と言っても過言ではないほど、転倒による骨折リスクは高いため、どのような方においても転倒を予防するに越したことはないと言えますね。

転倒リスクと悪循環

正直なところ、転倒リスクは患者さんの状態によって様々あると思われますが、一般的に高齢者の転倒は、寝室や居間などで方向転換や立ち座りなど動作の切り替えで発生することが多いとされています。

また、イスから立ち上がった後の歩容と転倒リスクの関係を検討、イスから立ち上がり後5mの歩行と通常歩行について比較した研究によると、

立脚時間、両脚支持時間、歩幅、歩隔変数において1歩目のみに2歩目以降と比べ差がみられた。

出村慎一:高齢者の歩容と転倒.関節外科.2011;30:100-107.

と報告されています。

つまり、動作の切り替えによる身体重心変位によって身体の不安定性が増すことが要因と考えられ、若年者であれば身体機能(筋力、バランス)で修正が可能ですが、高齢者の場合は1歩目を小さくし、両脚支持時間を増加させ身体重心を安定させていると考えられます。

そのため、ベッド周囲やトイレ動作などの1歩目、すなわち動作の切り替え時に最も身体重心変位が生じやすく、支持性低下による転倒リスクが高いことをセラピストと患者、さらには家族間での理解も重要と考えます。

また、転倒が生じるリスクの理解と合わせて、転倒によって生じるリスクの理解も必要です。

一般的によく言われているのが、転倒によって骨折や頭部外傷を引き起こし、二次的に身体機能低下を誘発するということです。

結果、身体機能低下に合わせて転倒リスクは高まるため、転倒の悪循環へと陥ってしまいます。

さらに、転倒を1度生じてしまうと、転倒恐怖感を呈する方は少なくありません。

この転倒恐怖感は、転倒経験だけでなく運動機能低下によっても引き起こされると言われています。

そのため、運動機能が低下した高齢者は易転倒性や転倒恐怖感が高まることによって身体活動量や生活範囲に制限をきたしていまいます。

転倒恐怖感に対するアプローチとしては、運動介入が有用です。

身体機能向上はもちろんのこと、運動によるテストステロンというドーパミン分泌によってやる気や挑戦心が向上し、自信がつくなどの気持ちの変化も促すことが可能と考えられます。

その他にも、住宅回収やプロテクターを装着するなどの非運動介入によっても転倒恐怖感を抑制効果が認められています。

出典ー高齢者理学療法学ー

転倒リスクの評価・カットオフ値

Time Up and Go Test(TUG)

◇測定方法

背中を垂直にしてイスに座り、両足を床につけ、手は大腿に置いた姿勢を開始肢位とする。

椅子から立ち上がり3m先の目印を折り返し(回り方は自由)、再びイスに座るまでの時間(秒)を計測する。

歩行を含めた動作は快適(通常)速度で行う。

<計測開始:体が動き始めた瞬間、計測終了:お尻が座面に着く瞬間>

◇カットオフ値

  • 転倒リスクあり:13.5秒以上
  • ADL機能低下のリスクあり:12秒以上(もしくは11秒以上)
  • 脳卒中患者の転倒リスクあり:19秒以上
  • パーキンソン病患者の転倒リスクあり:15秒以上

◇ポイント

TUGが11秒未満の比較的運動機能の高いロバストな対象では、二重課題処理能力の低下が転倒発生に関係しているとされ、TUGが11秒以上の運動機能低下を呈したフレイルな対象では、下肢筋力低下が転倒発生に関係しているとされています。

10m歩行テスト

◇測定方法

歩行時間を計測する計測路として10m、加速路・減速路として3mを計測路の前後に設定し、計測路における所要時間と歩数を計測する。

歩行は快適速度および最大努力の2通りで行う。

計測後、歩幅と歩行率を算出する。(m/歩数=歩幅、歩数/歩行時間=歩行率)

<計測開始:対象者の体幹が開始線を超えた瞬間、計測終了:対象者の体幹が終了線を越えた瞬間>

◇カットオフ値

  • 制限なく屋外歩行可能:12.5秒以内(0.8m/s)
  • 一部の範囲で屋外歩行可能:12.5〜25秒(0.4〜0.8m/s)
  • 移動は屋内歩行:25秒以上(0.4m/s未満)

◇ポイント

文献によっては屋外歩行自立のカットオフ値を11秒以内とするものなど様々ありますが、今回はPerryの報告を参考に換算された数値を使用しています。

10m歩行テストにおいて歩行速度を測定することが大きな目的ではあると思いますが、歩くのが速い・遅いで評価を終わっていては特に役に立っていないと考えます。

例えば、歩行速度の低下を確認し、歩幅の低下や歩行率の低下がみられた場合、膝伸展筋力の低下や体重が重いなどの他に身体の不安定性などが考えられます。

歩行速度を確保するだけの筋力があったとしても、重心コントロールが不十分であるだけでも数値の変化はみられると思います。

そのため、なぜ歩行速度が遅いのか、速度に対する歩幅・歩行率はどうなのか考えることが評価の意義としては重要と考えます。

6分間歩行試験

◇測定方法

10mの通路を用いて計測を行う場合、6分間の間に何往復できるのか計測し、何m歩行が可能であったのか算出する。

計測中は、被験者は疲労や息切れに応じて速度の調整や休憩を自由に行っても良い。

しかし、できるだけ速くおよび長い距離歩けるよう努力すること。

また、検者の役割として、教示(声かけ)やボルグスケールなどで自覚的強度も確認し、場合によっては中断する。

※声かけは1分経過ごとと残り15秒で行うのが好ましい。

◇カットオフ値

  • 日常的な外出に制限が生じる:400m以下
  • 外出がほとんどできない:300m以下
  • 生活範囲はごく身辺に限られる:200m以下

◇ポイント

6分間歩行試験については、直接的な転倒リスクの評価というよりは、呼吸循環器系などの運動時反応を全体的に評価するのに有効とされています。

そのため、死亡リスクの評価にも有用とされています。

  • COPD、びまん性実質性肺炎:350m以下
  • 特発性肺線維症:207m以下
  • 心不全:390m以下

しかし、持久力も少なからず転倒リスクに関与しており、歩行を始めて何分後にふらつきが増大したなどの歩行観察も必要と考えます。

片脚立位テスト

◇測定方法

片脚立ちを行い、持続時間を計測する。

挙げた足が床に着く・挙げた足が支持脚に触れる・軸足の位置がズレる・支持脚以外の身体部位の一部が床および手すりなどに触れるなどがあるまで計測する。

検者の目の前に印を設け、視線を向けさせて行う。

◇カットオフ値

  • 運動機能低下:15秒以下(もしくは20秒以下)
  • 転倒ハイリスク:5秒以下

◇ポイント

簡便なバランス評価としては代表的ですが、秒数以外にも評価できるものがいくつかあります。

例えば、バランスを崩した時の反応でパラシュート反応が見られたかどうかなども重要になります。

転倒時に手を出せるか否かで外傷率および部位は大きく変動すると考えられるためです。

また、閉眼と開眼の差を確認し、閉眼片脚立位が5秒以下であれば運動失調なども疑います。

あとは関節戦略などの確認も重要ですね。

Functional Reach Test(FRT)

◇測定方法

壁に横に立ち(開脚)、手は軽く握りこぶしを作り、片方の上肢を肩関節90°屈曲位にする。

その状態から上肢を水平に前方リーチさせ、最大距離を測定する。

<開始点:開始肢位で挙げた上肢の末梢点、終了点:最大前方リーチ時の上肢の末梢点>

前方リーチ時に体幹前傾をしても良いが、開始肢位に戻ってくることを前提に行う。

◇カットオフ値

  • 虚弱高齢者における転倒リスクあり:18.5cm未満
  • 脳卒中片麻痺患者における転倒リスクあり:15cm未満
  • パーキンソン病患者における転倒リスクあり:31.75cm未満

※15cm未満の方は、25cm以上の方に比べて4倍の転倒リスクがある

-年代別基準値-

  • 20〜40歳:男性/43cm、女性/37cm
  • 41〜69歳:男性/38cm、女性/35cm
  • 70〜87歳:男性/33cm、女性/27cm

◇ポイント

立位バランスにおける前方へに重心変位の可能範囲の評価に有用とされています。

また、前方リーチの際にどこの身体部位を優先的に用いているのかも観察するといいと思います。

理想はコアマッスルの十分な収縮による股関節屈曲コントロールですが、代償パターンとして骨盤前傾や腰椎前弯が過剰に生じるなどが考えられます。

こういった動作パターンを観察することで、コアの収縮の有無や腰椎疾患発生要因などを特定することが可能と考えます。

Berg Balance Scale(BBS)

◇測定方法

14項目のバランス評価をそれぞれ0〜4点の5段階評価を行う。

56点満点中何点であったかで転倒リスクを評価する。

-検査項目-

  1. イス座位からの立ち上がり
  2. 立位保持
  3. 座位保持
  4. 着座
  5. 移乗動作
  6. 閉眼での立位保持
  7. 両足を揃えての立位保持
  8. 両手前方リーチ
  9. 床の物を拾う
  10. 振り返り
  11. 360°方向転換
  12. 段差交互踏み換え
  13. 継ぎ足立位
  14. 片脚立位

◇カットオフ値

  • 病棟内自立:46点以上
  • 転倒リスクあり:45点以下
  • 転倒ハイリスクあり(病棟内見守り):36点以下

◇ポイント

静的バランスから動的バランスまで幅広く評価が可能であるため、バランス評価としてはとても有用です。

しかし、満点が4点であり5段階評価となっているため満点を取りやすいというところがネックです。

そのため、BBSで高得点だから安全と言えるわけではないことだけ抑えておきましょう。

参考書籍

まとめ

リハビリを行っていく中で、様々なところに転倒リスクは潜んでいます。

ですが、正しく転倒リスクを評価し、患者さんそれぞれの転倒発生要因として有力なものを抑えておけば、大きく転倒リスクを軽減することができると思います。

また、転倒予防のための治療としてもレジスタンストレーニングやバランス練習、二重課題トレーニング、ステッピング練習などなど様々な方法がありますが、これもまた患者さんそれぞれ必要なトレーニングは変わってきます。

そのため、治すことの前に適切な評価・統合と解釈が大切になってくると思います。

評価のカットオフ値などは時折ど忘れすることがあると思うので、復習がてらこの記事を見返してみてください(^ ^)

話は変わりますが、ビタミンDと転倒には関連があり、血中ビタミンD濃度が低下している患者に対してビタミンDを投与したところ転倒抑制効果が認められたとの報告などもあるようです。

それでは、今回はこの辺りでおしまいです。

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!

理学療法士 ヨシキでした!