トレンデレンブルグとデュシャンヌ歩行の原因を関節応力から考える|理学療法士なら知っておきたい原因とポイント【動作観察・画像検査からわかること】

トレンデレンブルグとデュシャンヌ歩行の原因を関節応力から考える|理学療法士なら知っておきたい原因とポイント【動作観察・画像検査からわかること】

こんにちは!

理学療法士のヨシキです!

みなさんは、動作観察をしている時にこんなことを考えたことはないでしょうか。

「あー、立脚期に対側の骨盤が下制しているなぁ。これはトレンデレンブルグとデュシャンヌ歩行どっちなんだっけ?」

私はよくあるんですよね笑

物覚えはいい方ではないので、今回は自分がすぐ確認できるようにまとめておこうと思います笑

トレンデレンブルグ歩行とは

トレンデレンブルグ歩行は「歩行時の立脚期に対側骨盤の下制が生じる」現象のことを指します。

一般的に、立脚側の股関節外転筋力の低下によって対側骨盤下制が生じる現象とされています。

ただ、実際は筋力に問題がないにも関わらず跛行が生じていることも少なくないです。

【直接的要因】

  1. 中殿筋の筋力低下
  2. 股関節の変形
  3. 内転筋の短縮
  4. 股関節の疼痛

【間接的要因】

  1. 脚長差(対側下肢の短縮)→ 対側骨盤の下制

デュシャンヌ歩行とは

デュシャンヌ歩行は、「歩行時の立脚期に対側(遊脚側)の骨盤が患側より下がるのを防ぐために、代償性に体幹を患側に傾けて平衡を保とうとする」現象のことを指します。

こちらもトレンデレンブルグ歩行同様に、立脚側の股関節外転筋力低下が影響しているとされています。

【直接的要因】

  1. 脊柱側湾等の変形
  2. 体幹不安定性(脊柱起立筋の筋力低下 or 疼痛による脱力)

【間接的要因】

  1. 立脚側への過剰な側屈(①立脚側中殿筋の筋力低下 → 骨盤下制に対する代償、②立脚側股関節内側および膝関節内側の疼痛回避)
  2. 過剰な遊脚側の股関節外転(股関節屈曲モーメント不足 or 顕著な脚長差 → ぶん回しによるクリアランスの確保)

※追記(2024.5.5)

【直接的要因】股関節外転変形および拘縮、【間接的要因】股関節内転制限

今回挙げた要因は、術前の症例で考えていますが、術後であればトレンデレンブルグ・デュシャンヌ共に創部痛や脚延長、筋攣縮等の影響もあります。

変形性股関節症で生じる関節応力

トレンデレンブルグとデュシャンヌ歩行のいくつかの原因の中で、共通点として挙げられたのが、立脚側の股関節外転筋力低下ですが、

筋力低下に関係してくる疾患として、変形性股関節症について考えてみましょう。

変形性股関節症の病態

まず、変形性股関節症の原因として臼蓋形成不全等の後遺症によるものが全体の80%を占めています。

つまり、80%のOA患者は臼蓋形成不全の影響を少なからず受けていることが考えられます。

臼蓋形成不全は、先天的に臼蓋が小さく骨頭の被覆率が低いです。

本来であれば、寛骨臼の内側上方部分が荷重部位になり、寛骨臼が骨頭を包み込むように骨頭を保持しています。

しかし、臼蓋形成不全では寛骨臼が小さく、骨頭の被覆率が低いため、臼蓋と骨頭の適合性が悪く大腿骨頭の外上方偏位が生じてしまいます。

出典ー星文彦:標準理学療法学 病態運動学 第1版.医学書院,2014,pp249.

上記の画像のように、本来の関節では右のイラストの様に広い面積に荷重分散できていますが、骨頭の外上方偏位が生じると、外上方へ高い圧縮力が集中してしまいます。

これによって、軟骨の摩耗や関節破壊が急速に進行していきます。

それに応じて、圧縮応力軽減のために骨硬化や骨棘形成、骨頭の扁平化などが生じ、結果的に変形性股関節症となってしまいます。

出典ー林典雄、浅野昭裕(監)、熊谷匡晃(著):股関節拘縮の評価と運動療法 第1版.(株)運動と医学の出版社,神奈川.2019,pp236.ー

また、先天的に臼蓋形成不全を呈していた場合、低い骨頭被覆率を骨盤前傾によって代償していることが多いです。

これによって、股関節の適合性が高まりますが、代償的に腰椎前弯が高まり腰部痛などの二次的な問題が生じてきやすいです。

【臼蓋形成不全による機能障害】

  1. 股関節屈曲拘縮
  2. 腰背部筋短縮・緊張亢進
  3. 腹部筋出力低下
  4. 股関節内転筋緊張亢進・外転筋筋出力低下

今回は、1と4番がトレンデレンブルグ・デュシャンヌ歩行に影響を与えていると考えます。

変形性股関節症と外転筋力

では、先ほど述べた1と4番の影響を考えてみましょう。

まず、1番の股関節屈曲拘縮では、股関節屈曲モーメント不足に加えて、片側のみ拘縮がある場合はTStの短縮から自覚的脚長差を生じてきます

その結果、床とのクリアランスを確保しようとぶん回し歩行で代償します。

それによって、デュシャンヌ歩行の間接的要因である、過剰な遊脚側の股関節外転を生じさせることになります。

また、自覚的脚長差がトレンデレンブルグ歩行の間接的要因であるため、対側骨盤に下制が生じる可能性もあります。

次に、4番の股関節内転筋緊張亢進と外転筋筋出力低下について解説します。

内転筋・外転筋に影響が及ぶ要因としては、骨頭の外上方偏位が影響しています。

骨頭が外上方に偏位することで内転筋群のモーメントが延長するため遠心性ストレスが加わることとなり、逆に外転筋群はモーメントが短縮するため筋出力が低下してしまいます。

つまり、主要因である中殿筋筋力低下がこれによって引き起こされてしまうことがわかりますね。

ただ、上記の解説は元々臼蓋形成不全を呈していた方の場合に起きやすいパターンですが、先天的な影響を持たない場合はどうでしょうか?

股関節の適合性を低下させるアライメントは、骨盤後傾や股関節内転位荷重が挙げられます。

骨盤後傾の場合、大腿筋膜張筋のモーメントが増し、中殿筋のモーメントが低下してしまいます。

それによって、中殿筋筋出力低下を生じ、トレンデレンブルグやデュシャンヌ歩行を誘発します。

また、股関節内転位荷重の場合は、内転筋の短縮や脊柱の側弯変形などが要因として挙げられ、これらも同様に外転筋出力低下を助長していきます。

股関節の適合性については、Instagramでも投稿しているので見てみてください😊

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まとめ

どうだったでしょうか。

トレンデレンブルグ・デュシャンヌ歩行ともに臨床では多く観察する機会がありますが、それぞれの原因を把握し、適切にアプローチできているでしょうか。

実際に私がアプローチしている内容としては、中殿筋のみが筋力低下を起こしていることは少ないため、短縮筋の伸長性向上や骨盤正中保持のための大殿筋強化、自覚的脚長差修正のための荷重訓練等行うことが多いです。

説明しようと思うと跛行を生じさせるパターンが多く、キリがないため割愛しますが、

要するに、直接的原因と関節的原因を考え、それらを改善させるためのアプローチを行っていきます。

しかし、変形が進行してしまっているものについては、リハビリで治すことは不可能であるためあくまでも対症療法であることは念頭に置いておきましょう。

専門職であるならば、治療対象を見極め、時には手術を進めることも重要です。

今回は、この辺りでおしまいです。

今後とも皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います。

理学療法士 ヨシキでした!