オーストラリアン徒手療法と仙骨・骨盤の評価⑴|仙骨のうなずき運動と腸骨のフレア【解剖・運動学から評価方法を解説】
- 2021.03.26
- 体幹
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こんにちは!
理学療法士のヨシキです!
今回はJeff Murray先生のオーストラリアン徒手療法を勉強させていただいたので、仙骨・骨盤の解剖学的評価からアウトプットしていこうと思います。
仙骨・骨盤の解剖学
骨盤とは、左右の寛骨・仙骨・尾骨から構成される骨格のことであり、体幹と下肢をつなぐ下肢帯として、体重支持や骨盤臓器の保護の役割を持ちます。
因みに寛骨は、腸骨・恥骨・坐骨から構成されます。
また、左右の寛骨は前方で恥骨結合により連結し、後方では仙腸関節によって仙骨と連結することで骨盤輪を形成します。
この骨盤輪が安定することで体幹・下肢の協調性が増し、動作時のストレス軽減・四肢の運動を効率的に行うことが可能となります。
この骨盤輪の安定のためにコアマッスルと呼ばれる、腹横筋・骨盤底筋・多裂筋・横隔膜が存在します。
また、後方の仙腸関節も関節面を安定させることで骨盤輪の形成に関わります。仙腸関節は多数の靱帯に支持されており、前仙腸靱帯・後仙腸靱帯・骨間仙腸靱帯・仙棘靱帯・仙結節靱帯などが存在します。
また、L4・5横突起から腸骨綾にかけて走行する腸腰靱帯というものも存在し、上部・下部線維の2つの線維のうち、下部線維が前仙腸靱帯と連結することで仙腸関節の安定性に関与します。
仙腸関節について
上記で述べたように、仙腸関節は多くの靱帯によって強固に固定され安定性を保っています。
そのため、仙腸関節の動きは個人差はありますが、わずか3−5mmしかないといわれています。
仙腸関節の動きとしては、寛骨に対する仙骨の前傾運動である「うなずき運動」、逆に仙骨の後傾運動である「逆うなずき運動」の2つがあります。別名としてニューテーションとカウンターニューテーションとも言われます。
また、仙腸関節の動きは筋収縮によって直接行われるものではありません。寛骨の前後傾に合わせてうなずき運動を行います。
そのため、寛骨前傾では逆うなずき運動、寛骨後傾ではうなずき運動が連鎖的に生じてきます。
さらに、骨盤より上方の重みが仙骨にうなずき運動を生じさせるため、仙結節靱帯・仙棘靱帯・骨間仙腸靱帯などの張力が増加します。
その結果、骨盤内での仙骨の動きが制限され、関節の安定性が増加します。
腸骨の動きに着目すると、腸骨の後傾時はinflare(腸骨の内方化)、前傾時はoutflare(腸骨の外方化)が生じます。
つまり、仙骨のうなずき運動では寛骨が後傾し、腸骨はinflare、仙骨の逆うなずき運動では寛骨は前傾し、腸骨はoutflareとなります。
ここで重要になるのが、コアマッスルである腹横筋です。
腹横筋の収縮は、腸骨をinflare方向に引き込み、それに伴って腸骨は後傾・仙骨はうなずき運動が誘導されます。
そのため、寛骨(腸骨)前傾が過度に生じている患者さんの場合は、腹横筋の収縮が入りにくくなるため、胸腰筋膜の緊張が低下し、腰椎の安定性が低下するため脊柱起立筋などを代償的に緊張させ腰椎過前弯に伴う腰部痛が生じてしまうと考えます。
アライメント評価
ここからが実践的な内容になります。
まずアライメント評価として腸骨綾の高さを立位・座位にて確認します。左右差を確認し、胸腰椎側屈の有無も合わせて行います。
例として、立位で右腸骨綾が左に比べ高かった場合、考慮すべき点として①右腰方形筋の緊張、②右下肢の延長、③寛骨の前後傾、④右大臀筋・中臀筋の筋力低下、⑤広背筋の代償動作などが挙げられます。
それに対して、座位での評価は下肢による閉鎖性運動連鎖が生じないため、立位状態での骨格・機能的な要素が取り除かれます。
そのため、座位の状態でまだ腸骨綾の高さに差がみられる場合は、骨盤よりも上の筋肉の影響と考えられます。
次に脚長差の確認をステージ3に分けて行います。
代表的な評価として棘下長・転子下長がありますが、今回は省きます。
まずステージ1では、両PSISを床面に均等に接地させるように膝関節屈曲で背臥位をとります。
両膝関節の高さを確認し、高さが違う場合は、脛骨の長さが違う可能性があり、一方の膝が前方に出ている場合は、大腿骨の長さが違う可能性があります。
その際、正確にPSISを接地させる方法としてセラピストが患者の両足関節を固定し臀部を挙上してもらい、PSISを接地させるように臀部を床に下ろすよう動かしてもらうといいでしょう。
次にステージ2では、両下肢を完全に伸展させ背臥位をとります。
その際、セラピストは母指を内果に当て左右差を比較します。この段階で左右差がみられても脚長差の有無を決定してはいけません。
考慮すべき点としては、①寛骨の前傾では脚長は長くみえる、②後傾では脚長は短くみえる、③筋膜の緊張・癒着があれば脚長は短くみえる、④臀筋の短縮で脚長は短くみえる、⑤臀筋の筋力低下で脚長は長くみえるなどが挙げられます。
最後にステージ3では、ステージ2の姿勢から患者は両寛骨を均等に前傾させ正面に体幹を起こし、長座位をとります。
この際、セラピストは母指を内果に当てたまま、足関節を固定しておきます。考慮すべき点としては、①背臥位から起き上がった時に脚長に変化があったか、②起き上がって脚長が均等になった場合は、背臥位で短くみえた下肢側の寛骨が後傾していたと考えられる、③起き上がってからも脚長差がある場合は、骨格自体の問題と考えられ、大腿骨か脛骨の長さが違う可能性があるなどが挙げられます。
しかし、③については、私自身臨床で確認した際、長く見えた下肢側の寛骨の前傾が過度に生じている可能性もあると感じました。
また、背臥位から正面へ体幹を起こす動作が困難な患者さんもおり、一概に有用な評価とは言えませんが、正面へ起き上がる際に肩甲骨まで浮かすことが可能な場合は腹直筋の収縮があるというスクリーニングとしても用いることができます。
評価のおさらい
今回は長くなってしまうのでこの辺で評価のおさらいをしておこうと思います。
症例に合わせて考えてみましょう。
歩行時、MStで寛骨の後傾が大きく生じてしまう患者さんがいるとしましょう。この患者さんの訴えは歩行時の臀部痛です。圧痛所見は梨状筋にみられました。
そこで、MSt時の仙骨の動きはどうなるでしょうか?
考えられる動きとしては、仙骨の前傾が可能性として挙げられますね。
さらに、仙骨の前傾に伴って腸腰靱帯へ負荷が増大してしまいます。腸腰靱帯は上部・下部と2線維あり、それぞれ上部は骨盤後傾で伸長、下部は骨盤前傾で伸長されやすくなります。
それに対して、代償から梨状筋の過活動が生じ、局所循環不全から疼痛を引き起こすと考えます。
そのため、この患者さんの場合、痛みが梨状筋にあるからといって梨状筋をリリースしてしまうとかえって痛みを助長してしまう可能性があります。
行う治療としては、原因を辿ると寛骨の後傾が挙げられるため、寛骨の前傾化及び仙骨の後傾化を目的にアプローチしていくなどが候補として考えられます。
加えて、梨状筋に対してはリリース・ストレッチングよりホールドリラックスによる緊張緩和が有効と考えます。
もう一つの症例です。
背臥位での脚長差をステージ3で確認し、左の脚長が長いとしましょう。
しかし、立位にて腸骨綾の高さを確認すると左右の高さはフラットでした。
この場合は何が考えられるでしょうか?
可能性としては、左の脚長が長いのに対して立位時にバランスを整えるために、代償的に左寛骨の後傾が生じているのではないかと考えられます。
それによって、長い脚長を短縮させ立位時の身体バランスを均等化していると考えます。
その他の可能性として、そもそも臀筋の筋力低下が生じている、体幹の右側屈で右腰方形筋を短縮させ右寛骨を挙上させているなども可能性として考えられます。
今回はこの辺で一旦おしまいです。
解剖・運動学で長くなってしまったため、評価・治療を解説し切れなかったので、次回にこの続きをまとめていこうと思います!
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今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!
それでは、理学療法士 ヨシキでした!
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