TCAサイクルにおけるエネルギー代謝|3つのエネルギー供給システムと運動強度【国試対策と復習】

TCAサイクルにおけるエネルギー代謝|3つのエネルギー供給システムと運動強度【国試対策と復習】

こんにちは!

理学療法士のヨシキです!

今回は、筋肉を動かす上で欠かせないエネルギー代謝について解説していこうと思います。

内容的には国試の復習内容となりますが、代謝について詳しく覚えている人は少ないと思うので、わかりやすくまとめられたらと思います。

筋収縮のエネルギー源=ATP

生きていく上でエネルギーは常に必要とされます。

手や足を動かすのはもちろんのこと、寝ている間でも体内では心臓などが絶えず活動しているため、エネルギー供給が必要となります。

では、そのエネルギーとはなんなのか。

答えは、ATP(アデノシン三リン酸加水分解酵素)です。

理科などで1度は聞いたことがあるとは思いますが、ATPはアデニンとリボースが結合してできるアデノシンに無機リン酸(Pi)が3つ結合することで構成されています。

これが体内の全細胞の直接的なエネルギー源となります。

正確に言えば、ATPからPiが1つ分離し、ADP(アデノシン二リン酸)とPiにへと分解される時に、エネルギーが放出されます。

ATPの分解によるエネルギー産生は、骨格筋の収縮のためだけではなく、熱産生や消化、内分泌、神経伝達など生命活動を営む上で必須の仕組みとされます。

しかし、筋のATP貯蔵量には限りがあり、ただでさえ安静時でもATPを消費してしまうのに、さらに運動を継続するとなると安静時以上のATPが必要となってしまいます。

そのため、筋のATP貯蔵量のみで筋収縮を継続することは困難といえます。

したがって、ATPが分解されて筋収縮に直接利用可能なエネルギーを失ったADPをATPへと絶えず再合成するためのエネルギーが必要になります。

このエネルギー供給(ATP再合成)システムは3種類あります。

  1. ATP-PC系
  2. 解糖系
  3. 有酸素系

ATP-PC系

このシステムは最も素早くATPの再合成を行うシステムであり、クレアチンリン酸(PCr)をクレアチン(Cr)と無機リン酸(Pi)へと分解する時に放出されるエネルギーを再合成に用います。

ATP-PC系では酸素を使わずにクレアチンキナーゼ(CK)という酵素によって行われる反応になります。

クレアチンについて詳しく解説します。

安静時では、クレアチン容量の約3分の2はリン酸を1つ多く含むエネルギー豊富なクレアチンリン酸として存在します。

そのため、ATP分解に対してクレアチンリン酸が無機リン酸を手放し、クレアチンキナーゼとしてADPに無機リン酸を送ることでATPの再合成を行います。

この反応は筋肉内に十分な量のクレアチンリン酸が存在する間に限られ、逆に言えばクレアチンリン酸が不足するまでは、骨格筋は無酸素運動を続けることが可能ということになります。

しかし、元々筋肉内のクレアチンリン酸含有量には限りがあるため、ATP-PC系が最大限使われるのは、7~8秒程度とされます。

また、運動後に残ったクレアチンキナーゼは、休憩することでリン酸を1つ追加し、クレアチンリン酸に再度変換されます。それによって、次の運動時にATP供給が可能となります。

つまり、体内のクレアチン含有量が増加すれば、骨格筋の運動耐用能が増しパフォーマンス向上に繋がります。

その結果、筋成長と筋力アップを促します。

さらに、クレアチンリン酸の貯蔵量が多い程、ATP再合成速度が早まるため運動後の疲労回復にも役立ちます。

少し話は変わりますが、クレアチンは骨格筋に存在する酵素であるため、筋肉に障害が生じると血液中に浸出してしまい、血液検査でクレアチンキナーゼ(CK)の値が高値を示してしまいます。

例えば、筋肉の変性疾患である筋ジストロフィーや多発性筋炎などの炎症、外傷による筋挫傷や急性心筋梗塞などでも著しく上昇します。

解糖系

このシステムはTCAサイクルにおける嫌気性代謝に分類され、ATP-PC系と同様に酸素を使わずにエネルギー供給を行うシステムとされ、グリコーゲンまたはグルコースをピルビン酸にまで分解する過程でATPを再合成します。

解糖系は、短時間で大きなエネルギーを出力することが可能である反面、そのエネルギー容量には限界があり、長時間にわたって運動を継続することは困難です。

そのため、最大動員されるのはATP-PC系が終了してから32~33秒程度とされます。

まずは、グリコーゲンとグルコースについて解説します。

結論から言うと、グリコーゲンは炭水化物にあたり、グルコースはブドウ糖とされます。

また、炭水化物は糖質と食物繊維で構成されているため、グリコーゲンはグルコースの貯蔵体となります。

グリコーゲンは、肝臓にその重量の5%(約100g)、筋肉には同様に1%(約250g)が含まれています。

グルコースは血糖値の調整に使われており、血糖値が高い場合は肝臓でグルコースの形で貯蔵され、血糖値が低くなるとグリコーゲンを分解してグルコースとして血中へ放出します。

また、肝臓ではグリコーゲンを分解してグルコースを血中に放出することができますが、筋肉ではグルコースを血中へ放出することができないため、筋中のグリコーゲンは全て消費されます。

筋中に存在するグリコーゲンは、運動に際して、解糖系のシステムであるようにグリコーゲンからピルビン酸まで分解され、ATPの再合成へ関与します。

また、運動中に肝臓から放出されたグルコースは活動筋に取り込まれ、酸化されることでエネルギーとして使用されます。

さらに、解糖系では、酸素を使わずにグリコーゲンをピルビン酸まで分解することが可能ですが、酸素が十分に供給されない状況におけるピルビン酸は乳酸脱水素酵素によって乳酸に還元されます。

乳酸は筋収縮を阻害する働きを持つため、疲労物質とされます。

つまり、エネルギー源であるグリコーゲンが減少するのに対して疲労物質である乳酸が増加することによって、筋収縮能が低下し、運動継続困難となります。

無酸素運動エネルギー供給系の中でも、ATP-PC系は非乳酸性のエネルギー供給系に対し、解糖系は乳酸性のエネルギー供給系となります。

次に、糖について解説します。

糖には様々な種類がありますが、今回はグルコースであるブドウ糖に加え、果糖について解説します。

まず、ブドウ糖については、先程も述べたように生物が活動するためのエネルギー源となるものです。

血液検査でブドウ糖濃度を調べることで糖尿病などの診断が可能です。

また、ブドウ糖は吸収が速く、小腸で吸収されると即座に脳のエネルギーとして利用することができるため、低血糖などでは、摂取することで即席の体内エネルギーとして活用できます。

しかし、必要以上の量を摂取してしまうとエネルギーとして処理仕切れず、余った分は中性脂肪(トリグリセリド)として体内に蓄積されます。

次に、果糖については、果物などに多く含まれる糖の一種であり、糖の中で水に最も溶ける性質を持ちます。

また、果糖は天然に存在する糖の中で最も甘く・コクが強いとされ、ブドウ糖に比べ大量に糖分を使用しなくても甘みを引き出すことが可能です。

加えて、血糖値を上げにくく、体内へ徐々に吸収されるため、急激な血糖値の上昇を抑えたい糖尿病や心臓病患者に利用されやすいです。

有酸素系

最後のシステムである有酸素系は、名前の通り酸素を用いた有酸素性のエネルギー供給系となります。

上記2つのシステム以上の長時間の運動を継続するためには、筋のミトコンドリア内で主として糖または脂肪の燃焼を行うことでエネルギー供給を行います。

グリコーゲンが分解され生じたピルビン酸あるいは中性脂肪などから影響する遊離脂肪酸(FFA)から生成されるアセチルCoAはTCAサイクルにて好気性代謝が行われ、ATP再合成が行われます。

このシステムではエネルギー出力が低下し、最もパワーが低いとされますが、糖や脂肪をエネルギーの基質としているためエネルギー容量は無限に等しく、長時間に渡って運動を継続することが可能となります。

そのため、有酸素系によるエネルギー出力は、酸素供給量あるいは利用能の大きさに左右されます。

その上限は、最大酸素摂取量や呼吸循環機能、毛細血管の発達、酸化酵素活性の高さなどが影響するとされています。

さらに、一定強度で運動時間を持続すると、ミトコンドリア内で脂肪の燃焼によるATP再合成率が高まります。

つまり、一般的に60%の強度とされるATポイントでの運動の持続は脂質の減少に効果的とされます。

参考書籍

まとめ

3つのシステムにて解説しましたが、勘違いしてはダメなこととして、それぞれのシステムは独立して活動するのではなく、3つそれぞれが働き、運動強度・時間によってシステムの寄与率が変わってくるということは覚えておいてください。

例えば、10秒程度の高強度の運動であったとしても有酸素系は機能し、長時間の運動であったとしても無酸素系が機能しないということはありません。

また、乳酸が生じるということは、エネルギー産生に糖が使用されているということがいえ、安静時や低強度の運動持続には脂肪が糖よりも多く消費されます。

逆に、運動強度が増せば糖の消費率が高まり、結果的に乳酸が蓄積し疲労の蓄積が生じます。

加えて、運動中に速筋線維から乳酸が生じ、遅筋線維や心筋で多く使用されます。

乳酸について付け加えとして、速筋線維で産生された乳酸は再利用される経路が存在します。

1つ目が、乳酸を産生した筋自身で乳酸をピルビン酸へ変換し、ATPの再合成として利用するもの。

2つ目が、血液を介して心筋や遅筋線維、持久性を持つ速筋線維(FOG)、肝臓などでピルビン酸に変換されATPの再合成や貯蔵されものが存在します。

長くなりましたが、エネルギーは身体活動を行う上で必須なものになりますが、その代謝経路は複雑で調べれば調べるほど詳しく、わかりにくいものが出てきます(笑

しかし、ある程度把握しておくことで、患者さんに必要な運動強度の設定が容易に可能となってきます。

僕自身まだまだ、最適強度の設定ができているとは言えませんが、だからこそ勉強しアウトプットしていこうと思います。

今回はこの辺りでおしまいです。

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います!

それでは、理学療法士 ヨシキでした!